その他法律関係

2022年5月 9日 (月)

帰国前PCR検査は即刻廃止すべき

 

 フランスに自転車旅行に行って来ました。コロナ禍が始まってから約2年ぶりの海外で、往復隔離もないのでロスは少なかったのですが、あまりにも日本の水際対策がひどく、特に帰国時に滞在国出国72時間前以降のPCR検査による陰性証明が必要とされていることについては、即刻廃止とすべく、記事にします。

写真は無関係な旅行中のもの(笑)。

 

1 実質論
 (1) 必要性は乏しい―入国時空港での全員検査を前提に
   出国72時間前とする医学的根拠などについては調査が及んでいない。また、この種の陰性証明を取得させることの効果に関する論文なども調査が及んでいない。
   だから、素人考えで裏付けもないという前提だが、入国時に空港で全員PCR検査をするという前提の下でどれほど意味があるのか。空港陽性は隔離なのだから、空港陰性の人が出発前陽性である場合に出発前検査をさせる意味があるが、通常空港陰性かつ出発前陽性というパターンは治癒したということではないか。空港陰性が偽陰性である場合に出発前陽性で入国拒否する意味があるが、それはどれほどの確率であるのだろうか。素人的にはかなり低いと思う。
   強いていうなら、事前に渡航を断念させる予防的効果があるかもしれない。が、その予防的効果がどれほど感染症の水際対策として実効性を持つのか、ちゃんと裏付けが取られた上でのものなのだろうか。
 (2) 弊害が大きい
   基本的に限られた滞在時間の一部をPCR検査に裂かざるを得ないことの弊害は大きい。平日昼間のみ営業している検査場が通常であろうから、帰国者は時間調整や営業している検査場の調査、検査の実施と大きな負担を強いられる。
短期滞在者にとっては致命的である。
 (3) 現状の厚労省書式、方式等の問題点
   仮に現状の厚労省書式や方式を改めても弊害は十分大きいので即刻陰性証明の取得は中止すべきであるが、以下のとおり現状の書式等を前提とすると弊害はなおさらである。
   すなわち、厚労省は「所定のフォーマットを使用」することを求めている。任意の書式でも構わないが、検体・検査方法に細かい決まりがあり、かつ医師の署名と印影を要求している。検体・検査方法の制限根拠はおそらく医学的な調査を背景に信頼性の高いものに限定しているのだろう。が、国内ならともかく各国様々な事情や根拠により各様の検査方向が採用されているはずである。入国のためのものであるから日本における信頼性を根拠とする合理性は否定されるわけではないが、弊害は大きすぎる。
   次に医師のサインと医療機関の印影を要求するナンセンスさである。これは粗雑な民間検査の混入を防ぐ趣旨だろうが、実情にあわない。海外は基本ハンコの文化がない。医師なり、各国が相当と認めている検査主体による検査だと判明するような記載があれば十分とすべきである。
   なお、原則紙の原本持参を要求するが、PDF等改変困難な電子データでもよいとされてはいる。
 (4) 以上の弊害の実際のイメージ
   筆者は5月6日にフランス、パリから帰国した。パリは比較的検査体制が整っていると見られ、宿泊先の近くに複数の検査場が見つかった。あらかじめフランス語併記の厚労省書式を持参して相談するに、「日本への入国用でスタンプも必要なものだね」と、経験ある反応であったので安心した。原本を取得するためには出国の前々日に検査を受けて前日受領する必要があるが、PDFでもよいということで、それなら前日でも大丈夫ということで前日検査とすることとした。当然2度出向く負担は大きいし、おかげで前々日は遠方のマルセイユに滞在できた。
   それで前日午後に受検し、検査結果は深夜にメールで送付された。送付されたのは「EUのデジタルCOVID証明書」らしかった。もちろん厚労省書式は渡しており、この書式でPDFで送付するように依頼し了解を得ていたが、果たして本当に送付されるか深夜中心配となった。すぐにお礼とともに「理解していると思うが、渡した厚労省書式に記入してPDFでメールしてくれ」とメールを出しておいた。それで翌朝厚労省書式がPDFで送られて来たが、よく見ると陰性だということしか書いてなく、スタンプはあったが、サンプル、検査方法、検体採取時間、医師のサインなどは空欄であった。不備な陰性証明では搭乗拒否される事例があるという情報はいくつかあったので、心配になり、直ちに空欄を埋めて再送するようにメールで依頼。その間にチェックインが開始されていたので、チェックインすると、カウンターで「COVIDの検査結果を見せて」と言われたので上記「EUのデジタルCOVID証明書」を見せるとあっさりOKで搭乗券が発券された。なお、この証明書は医師のサインやスタンプがないことはもちろん、サンプルの記載もなかった。
   この間の精神的負担はかなりのものであった。おそらく、搭乗時の調査は国、航空会社、担当者ごとに異なるのであろう。結果的に事なきを得たが、搭乗拒否のリスクは大きいので、事実上厚労省書式での陰性証明の取得は避けられない。
   チェックイン直後のタイミングで空欄が補充された陰性証明が届いた。ただ、検体採取時間など、一部読み取りにくい部分はあったし(「EUのデジタルCOVID証明書」に採取時間は明記はされている)、単なる誤記ではあるのだが、厚労省書式では無効になるとされる鼻腔ぬぐい液+RT-PCR検査法の組み合わせにチェックがなされていた(実際は鼻咽頭ぬぐい液がサンプルでこの場合RT-PCR検査法は有効)。このため、入国時に無効とされるおそれがあると、入国時の空港検査時まで心配せざるをえなかった。搭乗拒否は免れたので帰国できないことはないという点では安心したが、上陸拒否の結果隔離等されるのかという心配は残った。

 

2 形式論―法的根拠のあまりの乏しさと適正手続問題
 (1) あまりに取ってつけたような法的根拠
   帰国時に陰性証明書その他の提出を求めることができるという直接の法規定はない。厚労省の事務連絡(https://www.mhlw.go.jp/content/000611185.pdf)によると、帰国時の検査や待機要請は、ある航空機の乗客がこれに従わないと当該航空機に検疫法18条の仮検疫済証を交付しない扱いとするということだそうである。これは陰性証明の提出についても同じだと、山尾志桜里議員の質問に対する国会答弁で明らかにされている(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b204183.htm。なお、この答弁で「第五条の規定により我が国への上陸ができない」としているのはおかしいと思う。船舶の場合は「上陸」で、航空機の場合は「当該航空機及び検疫飛行場ごとに検疫所長が指定する場所から離れ」とされているから、「指定場所から離れられない」としなければおかしいのではないか。)。それ以上は明らかではないが、航空機全体に仮検疫済証を交付しない扱いであるのに、特定の人だけ上陸させないのは、その人以外の人物や物については検疫法5条1号の検疫所長の許可をしたということになるのだろうか。一見して法律が本来予定しているような運用ではないと考えざるを得ないが、どうか。基本的には、「検疫感染症の病原体に汚染し、又は汚染したおそれのある船舶等」と判断された場合に検疫法14条以下の措置(隔離停留等)を採るか、そうでない場合18条2項の「病原体に感染したおそれのある者で停留されないもの」として質問報告を求めるという流れが予定されているように見える。
   要するに、「陰性証明の提出も求める」という結論が先にありきで、あとづけで法律上の根拠を説明しようとしておかしくなっているものと思われる。本来は検査陽性か、合理的理由なき検査拒否を理由に停留措置に進むべきものであろう。
 (2) 手続的、不服申立方法に関する問題
   次の問題は、陰性証明の不提出または無効と認定された場合にどうやって争うかという問題、あるいは翻ってそもそも陰性証明の有効無効を判断する手続きの適正さがあるかというものである。
   処分性の有無が柱である。そう思って調べていたら、平たくいうと陰性証明を持っていないからといって入国拒否するなよとして、「航空機の着陸禁止」の処分差止を求めた判決があり、処分性なしとして却下されている(東地令和3年9月7日)。曰く「検疫法4条は,上記第2の2のとおり,外国から来航した航空機の長が,検疫済証等の交付を受けた後でなければ,当該航空機を検疫飛行場以外の国内の場所に着陸させてはならない旨を一般的に定めた規定であって,特定の行政庁が個別の行政処分によって国内への航空機の着陸を禁止することができる旨を定めた規定ではない」。まあ、確かにそうだろうとは思うが、だとするとどこで争えるのか。仮検疫済証の不交付という不作為の処分性を肯定できるだろうか。あるいは仮検疫済証の交付という作為を求めることになるのだろうか。上記裁判例では立ち入られなかったが、処分性以外にも航空機(機長)に対するものであるために原告適格の問題も出てくる。処分性が肯定されたとしても、仮検疫済証の交付は裁量処分と思われるので、裁量の逸脱が認められるかは絶望的な気がする。ここでも実際は陰性証明の不提出者という人に着目してなされる行為を、航空機に対する仮検疫済証の交付という問題で見るためにおかしくなっている。
   なお、上記山尾質問に対する政府答弁によると、入国時空港検査陽性の場合の停留についても即時強制行為として不利益処分に該当しないから事前の告知聴聞等は不要としている。即時強制行為かどうかは疑わしいし、仮にそうだとしても憲法上の適正手続の理念が全く及ばないわけではないだろう。陰性証明不提出→「上陸」拒否とするには事前の告知聴聞等は必要だろうし、例えば帰国時検査で陰性になってもなお仮検疫済証の不交付をするというのであれば比例原則にも反するのではないか。
 (3) 以上要するに、法的根拠も後付の不明確なものであり、争う手段も不備、手続的にも不適正であるということである。

3 実際陰性証明を提出しなかったらどうなるのだろうか
 (1) 搭乗時の搭乗拒否は、おそらく国、航空会社、担当者の判断によってぶれるのであろう。が、例えば厚労省モデルの陰性証明を厳格に審査して搭乗拒否することは、運送約款上認められると言わざるを得ない。この場合不幸だが救済方法はまずないであろう。厚労省モデルが不合理だとして国賠請求するくらいしか考えつかないが、まず認められないだろう。厚労省モデルの問題性は実はこの場面で一番顕著ではないか。
 (2) 帰国時は、推測だが、現在では不提出や無効な陰性証明であることから直ちに「上陸」拒否とはしていないのではないか。帰国時に配られたチェックシートには陰性証明の不提出の場合にその理由を特記事項として記載することとされていた。仮に「信念として提出しません」「多忙で取得できなかった」という場合にも、空港でのPCR検査で陰性なら仮検疫済証の交付をするという扱いなのではないか。かつて日本国籍の人間を出発国に送り返した事例があるようで、上記政府答弁では「航空会社により外国へ送還された者」と、要するに航空会社がやったことで行政がやったことではないとしているが、実際は検疫所による強制に近かったのであろう。現在ではさすがにここまでやってはいないと思われる。なお、上記政府答弁によると、送還された人数は「令和三年六月十日現在、七十四名である」が、このうち日本国籍のものが何人いたかという質問に対する回答ははぐらかされている。
   国外退去はいかにも根拠がないが、直ちに「上陸」を認められないとなると、任意での隔離依頼はあるかもしれない。ただ、陰性証明を持参してはいないが、空港でのPCRで陰性になれば、果たして停留の要件である「感染したおそれのある者」の要件を満たすか疑問ではある。陰性証明を持参しない人間にはそもそも空港でのPCRを受けさせないという扱いをしている可能性もないではないが、それこそ「上陸」拒否のための拒否で、合理性がない。

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2009年12月30日 (水)

産廃の排出業者はだれか




 産業廃棄物の排出業者は、自己の責任においてその産廃を処理しなければならず、その保管、収集運搬、処理等に関して様々な規制がある。
 たとえば、処理を他人に委託する場合、許可を受けた産廃処理業者に委託しなければならず、処理委託契約書の作成が義務付けられたり、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならないなど、様々な義務を負う。



  企業の排出物が産廃に該当するか否かにつき、主に次の3つの論点がある。
 ? そもそも廃棄物(=無価値物)か、有価物か
 ? 事業活動に伴って生じたものか
 ? 法令の規制する産廃の種類に該当するのか、一般廃棄物か



 ?については、法令が規制対象となる産廃を列挙しておリ、それに該当するか否かの問題だ。



 ?は、有価物であれば廃棄物処理法の規制がおよばず、リサイクルの問題になるこということだ。
 ただ、産廃処理法の規制を有価物に及ばさないことには疑問がある。なぜなら、産廃処理法の趣旨は、周囲の生活環境上に影響を及ぼすものの保管、運送、処分などの適正を確保し、もって生活環境を保持するところにあり、その趣旨からは「周囲の生活環境に影響を及ぼす排出物か否か」が本来基準とされるべきだからである。東京都環境審議会もこのような提案をしており、近いうちに見直しがなされる可能性がある。



 ?は、ある企業が反復継続しておこなう事業活動に伴って排出されたものでなければ、産廃にならないということだ。法律事務所で昼ごはんとして食べた弁当容器のプラスチック容器は、産業廃棄物にならない。法律事務所のが反復継続して行う事業から生じた廃棄物ではないからである。
 ただ、この問題に関連して、「あるものは産廃であることは間違いないが、誰が産廃の排出業なのかはっきりしない」という場合が生じる。これが、「産廃排出業者はだれか」という本日のテーマである。



 ア 建築現場では元請業者から下請け、孫請け業者まで多数の業者が出入する。建築現場から排出された廃棄物はこのうちどの業者が排出したことになるのか。
 イ 運送業者が配達に使う包装類が廃棄物であるとして、誰の廃棄物になるのか(例えば、通い箱、包装用紙等)
 ウ ショッピングセンターのテナントの廃棄物を管理会社がまとめて回収、処分している場合、誰が廃棄物の処理業者になるか。



 アについては、環境省の通知が存在し、それによれば元請業者のみが排出業者になるとされている。
 では、イはどうか。通い箱のようなものは、運送業者が回収して再利用する者と思われるから、受け取った側の業者の廃棄物にならず、運送業者が廃棄する際に産廃となるものと考えられる。では、再利用の可能性がない包装用紙(プラスチック)などはどうだろうか。受け取った側の業者が包装を解いた時点で包装用紙は無価値となるから、その時点で廃棄物となり、排出業者は受け取った側の業者であるという考えが素直に思える。そうすると、例えば運送業者が包装用紙を回収しているようなばあい、運送業者は産廃処理業の許可を受け、処理委託契約を締結しなければならないなど、様々な規制を負うことになる。
 ウについても似たような問題があり、素直に考えれば各テナントが排出業者であり、管理会社は許可を受け、処理委託契約を締結しなければならないように思われる。
 しかし、イ・ウのような場合の規制はやや行き過ぎに思える。本当は「排出業者」という基準よりも、「誰に産廃の処理につき責任を終わせるのが適当か」という観点から産廃処理法上の規制を終わせるべきであろう。こういう部分は立法なり、すくなくとも通達でしっかり明確にするべきである。今のところ、最終的な廃棄物処理につき問題がなければ特に指導等の対象にはなされていないとは思われるが、刑罰の対象にもなる行為であるから、明確であることが望ましいのは言うまでもない。


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