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2023年1月15日 (日)

台北地方裁判所訪問

 台湾の司法事情を学ぶべく、この年始に台北地方裁判所を訪問してきた。その感想を記事にする。

1 入り口その他
 外観は3階建て程度で、首都の地方裁判所としてはやや小さめに見える。これはおそらく台北市を取り囲むように新北市があり、そちらの人口のほうが台北市本体よりも多く、台北市それ自体の人口は少ないからではないかと想像された。名古屋地裁よりも規模が小さいように見えた。
 入り口では荷物検査がある。これは東京地裁や名古屋地裁のイメージと大差がない。ただ、入ってすぐ左手にどうやら刑事事件の受付のような窓口があり、一部匿名化されて事件名と当事者名が表示されていた。ちょっと日本では考えられないので、意外だった。台湾でも検察官が起訴権限を独占しているものと思うのだが、起訴状が受理されたかどうかについて審査の上表示するものなのだろうか。

 

2 受付その他
 訴状の受付場所それ自体はあまり日本の裁判所と変わらないように見えた。ただよりシステム化というか、銀行のような番号札方式だったし、おそらく訴訟費用の予納専用の窓口、番号札というものもあった。
 地下にレストランと売店等があるというので、足を運んでみた。レストランは地裁の食堂みたいなイメージ、売店もハイライフという台湾で有名なコンビニチェーンが入っていて、日本と変わらない。
 面白かったのは、卓球場があることで、職員と思しき数人が汗を流していた。
 弁護士休憩室みたいなものがあるのは日本と一緒だ。






 

3 法廷傍聴
 日本同様、おそらく民事事件の傍聴はわかりにくいであろうという予断?のもと、刑事事件の傍聴に向かった。どんな事件を傍聴しようかとうろうろしていると、事務官らしい男性が声をかけてくれた。曰く「我が国の法廷は公開だ。遠慮せずに見ていってくれ」。大陸人と間違えられたのであろうか。「私は日本人弁護士で台湾の法廷を見学するために来た」というのも野暮な気がしてそうは言わず、またもうちょっと事件を確かめたい気持ちはあったが、せっかくなので、その事務官が導いた法廷に入った。
 基本的に法廷内部は日本の法廷と同じイメージでいいが、重要なのはIT化が進んでいることである。なお、中国大陸の法廷と同じだが、裁判官名・書記官名はちゃんと名札がある。また服装についても弁護士や検察官も法服らしきものを着ている。かつらはしていない。かつらはおそらくバリシター(法廷弁護士)とソリシター(非法廷弁護士)の区別のあるイギリス法以来のもので、イギリス法由来の香港などではいまでもかつらを着用していたはずである。
 一番の特徴はIT化であろう。書記官がその場で調書的なものを作成していて、傍聴席に見える画面にも表示される。このおかげで傍聴人としてはだいぶ理解がしやすかった。ちょうど被告人質問の途中で入室したようで、事案としては詐欺の共犯事件の一方被告人の審理のようであり、否認事件ではないと思われたのだが、おそらく共謀を含めた関わりの深さについて尋問をしていたように思われる。ようするに、否認事件ではないが、従属的な立場であるということであろう。利益の分配を受けていないことを問うていたあたりは、日本の刑事裁判と重複する部分も感じられた。
 その日では結審とならずにもう一度期日を決めて審理続行のようであった。
 民事裁判の方にも入ってみたが、案に相違せず、日本の民事裁判同様に内容はすぐには理解しにくい。ただ、傍聴席にむかってディスプレイが用意されているのは刑事裁判と同様であって、一応争点に関連すると思われるキーワードが表示されていたりはした。イメージは日本の民事裁判と概ね一緒だが、10分間隔で弁論が入っているためか、比較的弁論準備手続に近い運用がなされているように見えた(ただ、日本でも弁論で積極的に議論する裁判官もいるので、裁判官ごとの差かもしれない)。

 以上をとおして一番思ったのは、IT化のことであって、日本の裁判も台湾程度のIT化をしてもいいのではと思った。刑事裁判の録音を巡ることや和解手続きの隠し録音を巡って日本でニュースとなっていた事件がある。例えば弁論準備手続の非公開や録音禁止などは一定程度理解できる面がないとは言わない。録音問題はともかくも、台湾の法廷でそうであるようにその場で法廷の内容を記録化して傍聴人を含めて示すというような姿勢はあっていいと思うのである。

 いずれにしても、法廷の設備から内容まで、大いに参考になる傍聴だった。

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