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2013年4月 3日 (水)

ベトナムにおける訴訟仲裁を始めとする法制度と、中国法との共通点

 愛知県弁護士会のメンバーでベトナムの司法機関を訪問してきた。不勉強であったベトナム法を勉強する良いきっかけになったし、実務的な話も伺うことができた。そうして思ったのは、ベトナム法と中国法の奇妙なまでの相似形である。本腰入れて勉強をすすめ、いつベトナム法の相談が来ても構わないように準備をしておきたい。
 なお、筆者はベトナム法の専門家とはとても言えないので、参考とされる際はご注意いただきたい。
1 仲裁と執行に関して
   中国では渉外仲裁に関してCIETACを用いるのが基本であるが、ベトナムにおけるCIETACにあたるのが、VIAC(Vietnam International Arbitration Center)、ベトナム国際仲裁センターである。渉外要素のある事件であればVIACで仲裁を行うことができ、これも中国同様に裁判よりは信頼性が高く、国際的な紛争ではVIACで仲裁が行われることが多いということだ。
   判決の承認執行については、基本的に認められない、つまり日本の裁判所の判決をベトナムで執行しようとしても執行の承認がおりないであろうということだ。中国に関しては司法解釈で明文化されているが、ベトナムについては私の知る限りでこの点の明文規定はないようである。いずれにしても、この点についても中国法とかなり似ているということができそうである。
   では、外国の仲裁判断の承認執行はどうか。中国に関してはニューヨーク条約により理論的に外国の仲裁判断の承認執行が認められる。例えば東京の商事仲裁協会の判断であっても、中国の裁判所の承認を得た上で執行が可能である。が、実際には地方保護主義のような弊害により、裁判所の承認が出にくいという実情がある。ベトナムの状況も結構似ていて、やはりニューヨーク条約に加盟していることから外国の仲裁判断の執行は理論上可能だが、執行の承認が降りないということがあるようである。さらには、仲裁判断が「ベトナム法の基本原則」に反する場合、裁判所が仲裁判断を取り消すことが可能であるということで、実際に瑣末な手続違反を取り上げて裁判所が取消してしまう例も結構あるということである。
   VIACのようなベトナムの仲裁機構の仲裁判断であれば直接執行が可能であるので、執行の観点からすればVIACを仲裁機関と合意することは合理性があるといえる。これは中国におけるCIETACとまったく同様である。仲裁判断への信頼性も向上しつつあるということであった。国外に執行対象財産がある場合ならともかく、中国にしてもベトナムにしても、仲裁の信頼性を気にしすぎることなく、執行の容易性から現地の仲裁機関で合意することは十分ありえる選択肢になってきていると思う。ただし、仲裁判断が出た場合に執行まで行くのは全体の1割程度ではないかという話(中国)を聞いたこともあり、結局執行の容易さと仲裁の信頼性をここの事例ごとに天秤にかけるということになろう。
2 裁判手続、裁判所の信頼性について
   三権分立性をとらないため、司法権や裁判所の独立が保証されていないことはベトナムも中国も同様である(念のため断っておくが、憲法や法律上は「裁判官の独立」の規定が存在するのがソ連系の社会主義立法の傾向である。例えばベトナム憲法130条)。
   中国法には検察院が判決等に誤りを発見した際に抗訴(控訴でなく、原文でこのように書く)を提起できるという裁判監督システムがある。ベトナムの裁判監督制度にも似たようなものがある(ベトナム民訴法250条)。詳細までは比較していないが制度設計としてはかなり共通する部分があるだろう。不勉強でよくしらないが、このような監督システムは社会主義立法の特徴なのであろうか。フランス法でも実はこのような制度があるとちらりと聞いたがしっかり調べていない。
   裁判官の質の問題でも似たような傾向がある。すなわち、中国でも1995年の裁判官法制定までは、試験制度はなく、裁判官は軍人0Bなどの名誉職的な色彩が強かった。ベトナムでも1993年まで選挙で裁判官が選出されていたそうで、やはり高齢裁判官の質の問題があったようである。また、諸文献によれば、中国同様、賄賂であるとか、裁判官の汚職も決して少なくないようであり、徐々に信頼は向上しているものの、全体としてはまだまだ裁判制度への信頼は発展途上のようである。
3 相違点
   一応相違点についてもいくつか触れておきたい。まず、中国法もベトナム法の社会主義立法をベースに市場経済を取り入れたことは共通するが、中国法は80年代の改革開放時代において比較的広範に各国の法制度を取り入れている。これに対し、ベトナムももちろん各国の法整備支援を受けて積極的に法制度を取り入れているのであるが、日本の法整備支援の影響がそれなりに強いということである。たとえば、民事訴訟法、破産法、執行法、知的財産法などは日本法の考え方が多く取り入れられており、中国民訴法ではない当事者主義・処分権主義的な考え方も導入されている。そのため、民訴法などは比較的とっつきやすいと感じた。
   次に、中国では最高人民法院の司法解釈が法規範としてかなりの重要性をもっている。手続き的な細かいことのみならず、実体法的な解釈から、立証責任の分配など手続法上の重要性まで、非常に重要なことについて規定されている。これは特定の法律に関する最終解釈権を授権されていることが法的な根拠である。しかし、おそらく、ベトナム法ではこれに相応する授権はなされていないのであろう。
   いずれにせよ、中国法を学んだ身にとっては、ベトナム法は、体系的にはもちろん、裁判・仲裁・執行における実務的な面まで相似点がおおい。今回の訪問をとっかかりにできればベトナム法案件についてももっと取り扱っていきたい。

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